佐伯泰英

Inoue_Hideto2012-05-07

 今、佐伯泰英氏の時代小説にはまっている。きっかけは、昨年末に入院している際に読んだ彼の小説である。これは時代小説ではなく、現代小説である。犯罪に巻き込まれる主人公が、英雄的な活躍をするスリリングな内容であった。約10冊程読み終えた後、彼が取り組んだ時代小説にたどりついた。いわゆる密命シリーズで、江戸時代の将軍や殿様の密命を受けた主人公の活躍が痛快であった。あっという間に30冊くらい読み上げてしまった。
 そして、今読んでいるのが、<江戸双紙>シリーズである。これは現在進行形で、30数冊が刊行されているという。江戸の浪人の下級武士の日常の出来事をもとにやはり主人公の痛快な活躍が見物である。そう、彼の小説は文章の背景に鮮やかな映像が見えるのである。彼の小説を映画にしたらきっと面白いだろうなと思う。実際、このシリーズは、今年、NHKのBSでテレビドラマ化されたらしい。そして、なんと、この小説の舞台の江戸時代の地図が出来たのである。この小説のファンが江戸時代の古地図をもとに書いた地図がその原型だという。そして、作者の佐伯氏もこの地図が参考になると評価している。
 ひとりの作者が生み出したひとりの主人公、そしてその周りの個性あふれる人々、これらの人々が作者を動かし、独自の行動をしてゆく。そしてその時代の地図の中で、一つにドラマが繰り広げられるのである。この佐伯ワールド、現代日本人が忘れた人間らしい人々が多く登場します。