トリプル÷ワン

 25年以上、インプラントの治療を行ってきたが、スウェーデンで開発されたブロネマルクシステムのグループでの勉強が最も役に立っている。現在の歯科医療界では、より簡単に手術ができることがよいことのように、そして審美にとらわれすぎている。大事なことは、インプラントが長期的に安定することではないだろうか。ブロネマルクシステムのグループでは、この基本的な手術法を大事にしてきた。
 つまり、骨の状況をしっかり確認し、神経の位置も確認して、安全な手術を行うことが重視されたのである。ところが、このところ、歯茎をあまりはぐらずに手術をしたり、審美を重視するあまり、骨の条件の悪いところにインプラントの埋入を行ったりしている。基本に忠実なインプラントを考えるならば、骨のしっかりした場所に長いインプラントを埋入することが、長期の安定につながるのである。
 長いインプラントを利用することにより、少ないインプラントの本数で、長い上部構造の作成も可能になる。例えば、下顎の無歯顎の場合、3本のインプラントで大臼歯までの補綴が可能である。短いインプラントであれば、3本では不足である。つまり、基本に忠実な手術を身につけることで、結果は画期的な方法を編み出すことができるのである。
 骨が少ないところへインプラントを埋入する際、骨に移植が必要であるが、これも、中途半端な方法だと失敗する。外科的な侵襲は大きくなるが、基本に忠実な方法が不可欠である。この基本の積み重ねが実は、画期的な新しい治療法につながるのである。下顎に、三本のインプラントで奥歯まで歯を作る方法を、トリプルーワン(Triple-One)と名付けることにした。