現在の歯科医療界

 約30年前、世の中好景気に浮かれていた。戦後の復興の社会変化に伴い、歯科治療の必要性が注目され歯科医師不足を解消するべく多くの歯科大学が開設された。ところが30年立って今度は歯科医師過剰だと言われだした。以前は歯科医師が不足していたので、少ない歯科医師が多くの患者の治療をしていた結果、歯科医は儲かる職業だと思われていた。ところが、現在、歯科医師過剰時代、さらに不況が影響して歯科医師貧乏時代が到来している。
 おかしなことである。歯科医師が多くなれば、それだけ質の高い治療が提供できる時代がきたのではないだろうか。それを、以前の時代と同じ手法で現在に当てはめようとするから、経済的に苦しい歯科医師が増えているのではないだろうか。本当に質の高い歯科医療は、明らかに患者の健康や幸福感の向上につながると思う。それをきちんと患者にわかっていただければ、患者自身も質の高い治療を希望するはずである。
 確かに経済の状況は楽観できない状態だと思うが、健康や美に対する関心はますます以前よりも増しているように思われる。健康な歯や口腔のが全身の健康に寄与することは明らかだし、精神的な満足が全身の健康に良い影響を与えることも事実である。我々歯科医師は、医院の経営状況を世の中の経済のせいにするのではなく、もっと原点に回帰し、患者の本当の幸福の為に尽くすことに重点をおくべきだと思う。