葉巻(シガー)

 今、東京では葉巻(シガー)が密かなブームになっている。東京のタクシーが全車禁煙になるというこの時期にである。タバコが人体に対して有害なことは科学的にも明らかである。我々、歯科医療に携わる人間にとって、歯周病の治療を行う上で重要な危険因子となっている。医療従事者がタバコを吸うこと自体問題である。しかし、へそ曲がりな私の場合、葉巻(シガー)は例外なのである。アメリカで、以前、タバコの販売会社が健康を害した市民から訴えられ、その裁判の過程でタバコの害について科学的に様々な角度から検証された。その中で、興味あることは、一般的な紙巻きたばこと葉巻(パイプなど)は別のものであるということが判明した。つまり、紙巻きタバコは燃焼温度が非常に高いので、その煙が有害なのだという。一方、葉巻やパイプの場合、不完全燃焼しているので燃焼温度も低く、煙の粒子が大きくタバコの煙よりも害は少ないらしい。これは、タバコの煙が,ただただ煙たいのに比べ、葉巻やパイプの煙は煙たくはなく香りが心地よいのである。
 さらに、紙巻きタバコはその煙を肺の中に入れて、血液の中にニコチンが侵入することによる心地よさを味わうらしい。一方、葉巻やパイプでは口の中で煙をためて、肺には入れないように吸うのである。葉巻やパイプの場合は、特有の香りが口の中に漂い香ばしい味がするし、これはアロマセラピーの効果があり人を心地よくする。タバコを吸う場合、ほんの数分で一本吸ってしまうようだが、葉巻の場合、一本で約60分くらい吸うことができる。最近では、葉巻の魅力が少しずつ理解されて、タバコは吸わないが葉巻は吸うという人も増えているという。実は私もその一人である。ヨーロッパでは、フルコースのディナーの最後に葉巻を吸う習慣がある。現在、日本の皇室の晩餐会でもこの伝統は守られているという。
 葉巻とパイプのソムリエに以前聞いた話で、アフターディナーの5C(ファイブシー)とは? コーヒー、ケイキ、チョコレート、シガーそして、カンバセイションなのだそうだ。