おひつ

 浅田次郎のエッセイを読んでいると、台湾で彼が旅行した際に、本来日本の伝統な物である<おひつ>の職人について書かれていた。昔ながらの手作りの<おひつ>を作っている台湾の職人さんが、たまに日本へ来るそうだが、昔ながらの本格的なおひつを作る職人が日本にあまりいないことを嘆いていた。たまたま、私の息子が今、松本の大学に通っているので、木曽のおひつを購入し、今我が家で愛用している。なぜか、一旦おひつに入れたご飯はおいしいのである。しかも、少し冷えてもおいしい。木の成分がご飯に侵入するのか、ご飯の水分を木が吸収するのか、理由はよくわからない。しかし、日本人が古来から食べていた米のおいしい保存方法としておひつは非常に優れた入れ物である。
 日本の伝統的な食器類には、すばらしいものがいくつもある。例えば輪島塗のお椀など、吸い物の味を変える質感がある、がしかし、毎日の食卓に使うと洗ったりする手間が大変なので、正月などの特別な日しか使わない。本来、このような食器は日常的に使って毎日気分よく食事をしたいものだ。便利な事ばかり考えていると、洗いやすい食器を使うはめになり、食事がただの栄養補給の時間になる。食事に関わる自分のこだわりを持つと、食事自体が有意義になり精神的に満足出来る。また、食品添加物などのは有害物質が入ったものよりも自然の食材を食べた方が確実においしい事に気がつく。もっと食文化を大切にしたいものだ。