インプラントと歯ぎしり

 インプラントの治療後、想定外の大きな力がインプラントにかかると、インプラントが破折したり、インプラントが揺れたりします。このような事実から、インプラント治療において、歯ぎしりする患者さんはインプラントできないと以前は言われていました。しかし、インプラント以外の方法で補綴処置した場合、つまり入れ歯にした時には益々大きな力が天然歯にかかるので、都合が悪い。そこで、方法として考えられるのは、インプラントをなるべく多く埋入し、そのインプラントを使って噛み合わせの関係を変えるような処置をするのです。噛み合わせの関係というのは、習慣性のものですから、急に治ったりしません。歯ぎしりの記憶が脳にインプットされていますので、当分の間は今まで通りに歯ぎしりします。噛み合わせの治療はある種の装置を歯の上に装着して行ないます。この装置を夜間使用していれば、歯やインプラントに特別大きな力はかかりません。そして、噛み合わせの治療が上手くいけば、顎の関節の周辺の筋肉がほぐれてきて、あごの動きが良くなります。その結果、歯ぎしりする頻度が減ってきます。つまり、時間をかけて顎の安定を待って、その後に補綴物を作製すれば、インプラントや歯に無理のない関係が再現できます。
 結論をいうと、歯ぎしりをしている人でも現在ではインプラントの治療は可能です。むしろ、歯ぎしりをしているからこそインプラントをするべきだと思います。ただ、治療の手順をステップごとに時間をかけて慎重に行なえば、歯ぎしりをしている人でも問題なくインプラントの治療はできるのです。