小松左京の死を悼み

 小松左京が7月26日になくなりました。SF作家として、彼の存在は非常に大きなものでした。SFというのは、未来を予測して異次元の世界で物語を作るという小説です。かれは星新一筒井康隆などと一緒に日本のSF小説の第一人者でありましたが、彼の作品は単なる文学ではなく、近未来の人類への警鐘を科学的にときあかすものでした。日本沈没などはあまりにも有名ですが、今回の東北の大震災をもある意味予測していたと言えます。SF作家が過去において表現した小説での近未来が、次々と現実のものになっていくことが多くあります。
 彼の作品の中で、人間の複製であるアンドロイドが人格を持つ内容の小説があったことを思い出します。科学の進歩は人間の行動を大きく変化させます。今日のようなインターネットの社会が広まることで、政府の中枢機関がサイバー攻撃を受けるなどといったことは、SF作家たちが随分昔に小説にしていたのではないでしょうか。彼の短編を集めた本を時々読み返し、その中で彼が予測した社会が現実になっていることに驚かされていました。
 今後、世の中が変化し、思いもしてなかったことが現実となった時、人類は本来の力を発揮し、原点に戻って立ち直っていくのでしょう。今日のような混沌とした現実社会を本来の姿に戻すには、新しいルール作りが必要だと思います。小松左京氏は、ずっと以前から、世界が一つの連邦国家になることを予測していました。地域紛争をしている場合ではなく、世界は一つの連邦として話し合い、地球の限られた資源を上手に分配して、無駄をなくすべきだと思います。日本の人たちは日本の利益ばかり考えていると世界から見限られます。原子力発電所の事故は世界の空気中に放射能をばらまくという事実をもっと認識しなければなりません。経済的な国境はもうなくして、世界平和を語ることのできるような人材を日本の国家元首に担ぎたいものです。