滅菌と安全

Inoue_Hideto2006-12-30

 化学物質のグルタルアルデヒドによる害で病院側に賠償命令が出た(毎日新聞06.12.26)。グルタルアルデヒドというのは、医療機関で滅菌法の一つとして頻繁に使用されている。この薬品を消毒洗浄作業で使っていた看護師が化学物質過敏症になり、その病院に1063万円の損害賠償命令が出されたのである。我々歯科領域でも、オートクレーヴ(高圧滅菌装置)にかけられないような医療用具の滅菌に使用される場合が多い。つい最近まで、私の医院でも使用していた。がしかし、今回報道されたような医療従事者への害が報告されている状況を考慮して、使用を中止したばかりである。
 医療用具の滅菌は十分にしておかないと、院内で治療を通じて病気がうつる危険性がある(院内感染)。その防止の為に、各医療機関で滅菌法は工夫をこらしている。今回、問題になったのは、医療用具の洗浄や滅菌に関わる看護師などの医療従事者への感染や薬害についてである。歯科医療の分野で、今問題になっているのは、使用後の器具の洗浄の方法についてである、従来、手洗いである程度器具をきれいにした後にオートクレーヴにかけるのが普通でした。ところが、この手洗いだけでは器具の細かいところまでは十分に洗えないし、手洗いの作業中に洗っている人に感染の危険や薬害の危険が考えられる。そこで、登場したのが、専用の機械による洗浄法である。ヨーロッパでは機械による洗浄が10年ほど前から行われてる。日本では、やっと今年、歯科用の洗浄、消毒器が厚生労働省で認可され、歯科医院でも今後普及するであろう。私の歯科医院でも、2ヶ月前にマッケゲティンゲ社製の洗浄消毒機を導入した。今では、手洗いをせずに全てこの機械で洗浄と消毒まで行っているので、手洗いによる従業員への危険性はほとんどなくなった。
 右の写真の人物は、フランスのルイ・パスツールという人で、世界で初めて滅菌器を作った人物で、感染管理や感染予防の父とあがめられている。ワインの製造工程における簡易的な滅菌法を発明した人で、今日のワインの普及をかげで支えた功績も大きい。感染管理や感染予防に関する考え方や方法については、エイズノロウイルスに限らず全ての病気の治療や伝搬抑制において重要である。医療機関のみならず、一市民として正しい知識を持ちたいものですね。ハイレベルな滅菌システムを構築するためには、それなりのコストがかかります。現在は、各医療機関の良心に基づき献身的な取り組みが取られているが、本来、国民の健康の為に国家がもっと厳格な基準に基づく滅菌システムを構築すべきである。
マッケジャパン(株)>>
ゲティンゲジャパン(株)>>